お金のかからぬ人づきあい

東京では人づきあいにお金がかかる。

ちょっと外出して、友人と食事でもすれば、お金に羽が生えたようになくなる。

会費が4万円の同窓会もあると聞いて、びっくりした。

それに比べると、ドイツ人との付きあいには、お金がかからない。いつもそう思う。

先日、ハイキングに行った。紅葉のきれいな時期で、めずらしい秋晴れ。一行は9人と犬2匹。犬たちの喜ぶ姿といったら、ない。紐を離したとたんに一目散でどこかへ走っていってしまった。でも飼い主が名前を呼ぶとすぐ帰ってくるところが、ドイツの犬らしい。

ミュンヘン市の南部まで地下鉄と市電を乗り継ぎ、南北に流れるイザー川沿いに出た。

参加者の一人が高所恐怖症のため、山登りはやめて、基本的に平地だけのハイキング。

楽なコースかと思っていたらさあ、大変。

ドイツ人の歩き方は、日本人よりはるかに速い。

身長が190センチ以上の参加者も何人かいるから、足の長さがちがうのか。

3時間ほど南の方角に歩き、トイレ休憩かと思いきや。倹約好きの弁当持参組はレストランに入りたくないという。

みなハイキングの途中で、茂みに隠れて、自然の声に従って用を済ましているからだ。

しかし、文化的な厠へ行きたい日本人としては是非ともレストランで休憩したい。

幸い
3人ほどお弁当を持ってきていないため、休憩となった。

私はおにぎりを持っていたのでスープだけ注文。

おにぎりを指差して「なにそれ?」といわれながらも、「これは最近はやりのスシの変形」と説明する。

休憩後は、またひたすらハイキング。

こういうときの話題は、仕事の話はあまりせず、恋愛・結婚問題、そして、倹約に関することが多い。

やれあの電話会社が安いとか、あの店のジーパンはいくらだったとか、アパートの家賃がいくらとか。

気がつくと、すでに歩き始めて6時間ほど。

え? もう
20キロも歩いたの? 

そこで喫茶店に入り休憩。

デザートのカイザーシュマルンは、ホットケーキのような生地を小さく切って、粉砂糖とりんごのムースで軽く味付けしたもの。ドイツ南部やオーストリアでよく見られる。

二人で一人分のデザートと飲み物を注文して、一人
7ユーロ。

お昼のスープが
3ユーロだったから両方で1000円ぐらいの感覚だろうか。

さて、この日の電車代は、なんと、一人2ユーロ。

5人のグループで、10ユーロの週末特別割引・グループ切符を買ったから。この日かかった費用は、交通費とカフェ代でしめて12ユーロなり(1500円くらい)

ドイツ人とのつきあいはお金がかからなくて気楽である。

運動にもなったし、一石二鳥だ。足腰がひどく痛くなったけれど。

(文・福田直子 絵・熊谷 徹 ホームページ http://www.tkumagai.de